甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「……っ、ん、…せん、せ……」
終わらなく繰り返されるキスがいい加減苦しくて先生を呼ぶ。
先生は少しだけ離れて、甘い声で聞く。
「……なに?」
「苦しい、よ……っていうか、近いっ……」
10センチほどの、鼻がくっつくような近さで止まったりするから文句を言う。
それを聞いた先生は、少しだけ不機嫌に表情を崩す。
「近いって……おまえ、まだ恥ずかしいとか言うつもりか?」
「言うよっ! っていうか、本当に離れて……っ」
「無理」
あっさりと断られて言葉を失うと、先生が再び距離を縮めてきて。
「今日はもう、離さねぇから」
「……っ、せ、……――――」
耳に直接注ぎ込むように言われた言葉に、胸が飛び上がった時―――……。
寮のドアの開く音がした。
そして、続いて聞こえてくる騒がしい声。
「矢野先生、市川さーん。ごめんねー、遅くなっちゃってー!
夕食置いていくからー!」
「……」
中村さんの声に、あたしと先生の間に小さな沈黙が生まれて……そして。
「……ご飯、食べない? あたしお腹空いちゃった」
「……だな」
込み上げる笑いを逃がしながら、先生と視線を交わした。