甘い魔法②―先生とあたしの恋―


「先生のためを思ってじゃないんです……。

そう見えたかもしれないけど……、でも違う……」

「それでも、別にいいんじゃない?」

「……え?」


顔を上げると、坂口先生が微笑んでいるのが見えた。


「俺が市川さんにメールで言った事覚えてる?

『傷つけないで欲しい』って」

「……はい」

「理由はどうあれ、市川さんはハル兄を守ってた。

俺からの頼みは、ハル兄を傷つけないで欲しいって事だけだから。

それを守ってくれた市川さんに言う事なんてないよ」

「……」

「それにね、人間なんか誰だって自分が一番なんだよ。

そんなの当たり前だし、変えようがない。

だけど、自分の為にした事が相手の為にもなるんだったら、すごい事だと思わない?」


ニコっと笑う坂口先生をじっと見つめる。



< 435 / 458 >

この作品をシェア

pagetop