甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「自分が楽になりたいからって理由で相談したってよかった。
相談して『守ってね』なんて甘えれば、ハル兄はそうしたよ。
……でも、市川さんがそんな女じゃなくてよかった。
ハル兄を心から必要としてくれる子でよかった」
優しく微笑む坂口先生には、他意はないように見えた。
ずっと、無意識に苦手意識を持ってた気持ちが、その笑顔に少しだけ綻ぶ。
あたしも笑顔を返そうとして……。
でも、横から伸ばされた先生の手が、目許を覆った。
「いつまでも見つめ合ってんなよ」
「ハル兄って本当に嫉妬深いよね。
いつか、しつこいって愛想つかされるよ」
「うるせぇよ。
……とりあえず、今回の件は市川がそれでいいなら許してやる。
けど、秋穂の事はおまえがなんとかしろよ」
そこまで言ってようやく離れた手。
視界を取り戻すと、坂口先生の表情が焦りに変わっていた。