甘い魔法②―先生とあたしの恋―
そんな事を考えながら先生の背中を眺めていたあたしを、諒子が不思議そうな顔して覗き込んだ。
「なに?」
「んー、なんか視線が意味深だったから。なんかあった?」
「そういう訳でもないんだけど……」
言うほどの事でもない気もしたけど、それでも教室に入りながら一連の流れを説明する。
施設に行った事。
校長の奥さんに会った事。
……秋穂ちゃんの事。
一通りの事をざっくり話したところで、軽快な音がスピーカーから流れてきた。
デパートの放送でも続きそうな上品な音に、その後の言葉に耳を済ませる。
『全校生徒にお知らせします。
一時間目は第一体育館で離着任式を行います。
始業時間五分前には整列するようにして下さい。
繰り返します―――……』
一瞬静かになった教室が、放送終了と共にまた賑やかな声でいっぱいになる。
それを見てから、諒子が話を戻す。
「そういえば去年の今頃来たんだよね、ハルくん」
「……ハルくん?」
聞き慣れない呼び名に驚いて諒子を見ると、諒子は小さく眉を潜めた。