甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「だって、実姫の彼氏の事話題に出した時、いっつも面倒くさいなーって思うんだもん。
バレないようなあだ名考えようよ。
っていうか、『ハルくん』よくない?」
「『ハルくん』……。確かに全然誰だか分かんないけど……」
『ハルくん』
先生をそう呼ぶ秋穂ちゃんが思い出されて、少しためらってしまう。
あたしが黙った理由を勘違いした諒子は、首を傾げながら変なあだ名を並べ始める。
「気に入らない?
じゃー……ハルちゃん、ハルっち、ハルハル、ハルりん……。それ以上はちょっと変なのしかないんだけど」
「っていうか、ほとんど変だよ。
いいよ……ハルくんで」
笑いながら言うと、諒子はあたしを肘でつつきながらニヤニヤ笑う。
「実姫は『ハル』でいいでしょ?」
「なんでっ……あたしだって別に……」
「せっかく呼び捨てにできるんだからそうした方がいいって」
そう言った諒子に、諒子と要くんの関係が浮かぶ。
義理の兄妹だから、諒子は『要くん』って呼んでるけど……。
諒子ももしかしたら『要』って呼びたかったりするのかな。
そう考えると諒子の思いに首を振ることは無神経に感じて。
素直に頷いた。