甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「なにか見たの?」
「うん。昨日の離着任式中だよ。
坂口が矢野センと知り合いだとか言ってたでしょ? その後、チラッと見たら、馬場がなんか嬉しそうに矢野センに話しかけてたから。
どうせ坂口との事聞いてたんだろうけど、話が終わった後もチラチラ矢野セン見てたし。
好きって聞こえてきそうな目で」
諒子と同じようなタイミングで、あたしも先生を見たのに。
……先生の隣に馬場先生がいた事すら分からなかった自分に、頬が熱くなる。
まるっきり先生しか目に入ってなかった事に苦笑いを零しながら、馬場先生を思い出す。
好きだった人だとか、好きでも望みがない人が同じ職場にいるのって……結構つらい事かもしれない。
あたしだって、先生に振られてればきっと―――……。
「馬場先生がどれぐらいの気持ちだかは知らないけど……でも、一度好きになったらなかなか諦められないよ」
「まぁね。あの歳で本気だったなら……結構引きずるかもね」
うんうん。と頷きながら言う諒子に、あたしは身を乗り出す。