甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「この寮の暮らしはあまり生徒にも浸透してないし、できれば注目されたくねぇんだ。
だから、瞬も口外すんなよ」
「なんで?」
ぶっきらぼうに言いながら椅子に座った先生に、坂口先生が聞く。
あたしも先生の斜め前に座りながら先生の答えに耳を澄ませる。
「この寮は取り壊しの予定があったところに、俺が無理言って住ませてもらってるから。
もしも興味本位で生徒が遊びにきだしたりしたら、何かの拍子で保護者会だとかにも話がいって、取り壊しの計画もまた上がるかもしれないだろ」
……なるほど。
「なるほどねー……。でも、別に他の場所に住めばいいじゃん」
「そんな自由に使える金もねぇし」
「それってさぁ、施設に仕送りしてるからだろ? 昌じぃも里子さんも、要らないって言ってるのに」
先生の金欠の原因を知って、あたしは思わず先生を見た。
いくら公務員だから給料が低いって言っていたって、一人暮らししてる人はいくらでもいるのに、なんで先生だけ? っていつも疑問に思ってた。
でも、その疑問を口にする事で、先生がこの寮から出て行っちゃっても嫌だから言葉にした事はなかったけど……。
それが原因だったんだ。