甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「もう帰れよ。おまえのアパート、ここから50分はかかるだろ」
「え、俺、ハル兄んとこ泊まるつもりでいたんだけど」
坂口先生の言葉に、先生は明らかに迷惑顔になる。
「無理に決まってんだろ?
昨日も言ったけど、市川もいるのにおまえなんか泊められるわけねぇだろ。そうじゃなくても、泊めねぇし。
やたらデカくて暑苦しいんだよ、おまえが部屋にいると」
先生がぴしゃりと言い切ったから、坂口先生は反撃の言葉もなしに少しだけ肩を落とす。
「ハル兄は相変わらずつれないなー……」なんて言いながらも、その後も先生に何かと話し掛けて、20時を過ぎた頃帰って行った。
あたしは、坂口先生が寮から出て行った音を部屋で聞きながら……手元のケータイを見つめていた。
誰からなのか分からない受信メール。
悪戯にしては確信をついている内容が不安ばかりを感じさせて、唇を噛みしめた。