甘い魔法②―先生とあたしの恋―

隠し事



【矢野SIDE】


市川のケータイに変なメールが送りつけられてから数日。

なるべく早く寮に帰るようにしている俺に、市川は「もう大丈夫だから」の一点張りで、メールの事を話題にも出さない。

それは、俺の心配性を分かってるからなのかもしれないけど、少しじれったい。


寮のドアの鍵はかなり古いタイプのもので、頼りがいなんてこれっぽっちもない。

掛けても掛けなくても同じように感じる鍵を、今までは特に気にする事もなかった。


鍵は個室についてるし、泥棒だってわざわざあんな古い寮なんか選ばない。

そんな理由で、個室についてる鍵で十分だと思ってたけど、こうなってくると話が別だ。

安全も保障しないような鍵に俺の留守を守らせておくのは気が気じゃなくて、これを機に業者に頼んで新しい鍵に付け替えてもらった。

一応、昌じぃに許可をもらって。


誰にもバレないようにこっそりやれって事と、自費負担って事で手を打った昌じぃのおかげで、ボロい寮には似合わないような鍵がついた。


心配性の俺を知っていても、さすがにそれには市川も驚いてたけど。



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