甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「矢野セン、保健医の坂口先生とどういう関係ー?」
瞬があんな挨拶をしたせいで、行く先の授業で必ずその質問を受けるはめになった。
受け持っているクラスは8クラス。
この質問を受けたのは、これで5回目。
あと3回これが待っている事を考えると、頭が痛い。
「どういう関係もねぇよ。ただの腐れ縁」
施設出の事を隠しているつもりもなかったけど、俺がそれを言う事で昌じぃや瞬が嫌な思いをしても嫌だったから、なんとなく事実は言わないでいた。
昌じぃも瞬も、俺同様、施設で育ったことに関して、恥ずかしさだとか劣等感なんかは持ってないけど。
ただ……、瞬に関して言えば、自分が苦労してきた分、周りに厳しく当たる部分がある。
こないだの市川の件みたいに。
本当に傷つけられた人間なら、そう簡単には人を許せない。
あの時、市川にそう続けたかったんだろうけど……。
それを思うと、瞬は自分の生い立ちに対して少しの疎外感を感じているのかもしれない。