甘い魔法②―先生とあたしの恋―
毎日のように来る鬱陶しい奴ではあるけど、クラスでは人気のある男子で、学年でも顔が利く。
澤田がこう言ってる以上、このクラスではもう問題なさそうだし、きっと澤田が学年中に少し大げさな噂を流すだろうから、この学年でも問題なし。
馬場先生との事が変な尾ひれをつけて噂される事も恐らくない。
変なメールで思い悩んでるのに、そこにこんなくだらない事で悩ませたくない。
市川の事だから、馬場先生の事はとっくに知ってて言わないだけかもしれないけど。
意地ばっかり張って、「大丈夫」を繰り返す市川がじれったくて、胸の奥が鈍く痛む。
意地だとか遠慮だとかモラルだとか。
全部取っ払わせて、あいつの胸の内まで全部を俺が知っていたいと思うのは、
全部取っ払わせて、俺だけのモノにしておきたいなんて思うのは、
きっと普通じゃない。
……でも、言葉にしないだけで、本心には違いないんだけど。
『犯罪に繋がりそうで怖い』
瞬が言っていたらしい言葉に反論なんてできない。
そんな事ををすんなり聞き入れてしまう俺は、きっと異常だ。
化膿しそうな昔の傷跡が、ここにきてやけに目立ってきて……、俺を縛り付ける。