甘い魔法②―先生とあたしの恋―
市川と付き合った事によって、徐々に気付かされていった支配欲の強さ。
信じる信じないをまったく別のところに切り離した場所にある、市川が俺から離れていく事への恐怖感。
それは……多分、俺の過去が関係してる。
どんなに記憶の中に埋め込んだって、決して消えない、母親に置き去りにされた過去。
それが、いつか市川だって俺を捨てるんじゃないかって恐怖を創り出す。
……波みたいに絶えることなく、ずっと。
「そういえば、市川さんって保健委員だったんだね。
さっき委員会で顔合わせてびっくりした」
ノートパソコンに視線を落とした瞬が出したのは、市川の名前。
「へぇ」
興味のない振りをして返事をすると、瞬は意外だったのか不思議そうに首を傾げた。
市川との関係は、施設の人間には話してもいいと思ってた。
でも、瞬が学校の人間になった以上、話は別だ。