甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「あれ、知らなかった? あんまり話したりしないの?」
いや、知ってるけど。
「食事で一緒になれば話すけど、それ以外は。
市川はあまり自分の事は話したがらないし、俺もそんなにべらべら話し掛ける方でもないしな」
「へー、そうなんだ。昨日のやりとり見てたら結構仲良さそうだったのに」
「まぁ、一年も一緒に暮らしてればそうなるだろ。……どんな意地っ張りとでも」
瞬の洞察力に少しだけ驚きながらも平然を装うと、瞬は、にっと笑って俺を見上げる。
「意地っ張りなんだ、市川さん」
「……俺が見る限りだとな。
家庭の事情も俺が無理矢理聞き出すまでは何も言ってこなかったし、ストーカーメールの事も隠すつもりだったみたいだしな」
俺が心配症だって分かってるからこそ、黙ってるつもりだっただろうけど。
市川のそういう遠慮がちな、俺に頼らないところが……なんつぅか、たまに気に入らねぇ。
だけど、そんな感情は腹の中に溜めたままぶっきらぼうに答えると、瞬は小さく笑って視線をパソコンに戻す。