チョコレートより甘い恋
それからしばらくそうしていると、やっと心も落ち着いてきて。


ちょっと冷静になったら自分がすごく恥ずかしくなって顔を隠すように俯いた。


逹木くんは、そんなあたしを見下ろして、未だに頭を撫で続けてくれている。


「唯瀬。」


そう呼ぶ声も優しくて。


導かれるように顔を上げた。


「泣き止んだ?」


子どもをあやすようなその声に、恥ずかしく思いながらもコクンと小さく頷く。


頷いたのを確認すると、逹木くんは満足そうな笑みを浮かべロータリーの時計を指差した。


「映画、はじまっちゃった。」


零すように呟かれた一言に、あたしは自分の腕時計に目をやる。


「あ…」


腕時計で確認しても、携帯で確認しても時間は変わらず。


映画はもうとっくに上映されている時間だった。




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