鳥籠
シュンはニコニコとコーヒーを飲みながら言う。

「そのうち取れないかな、ギター雑誌の連載」
「じゃ、あたしが教則DVDでも出そうか?」

シュンがぷっと吹き出す。

「何の教則だよ! モニターの蹴倒し方!?」
「マイクスタンドの投げ方とかね」

ライブ中に何やってんのか、あたしったら。
確実に、ギター弾いてる時間より、そんなことやってる時間の方が多い。

「……にしてもさ、アキヒロ遅いな」

シュンの言葉に、あたしは黙ってうなずく。
その場の空気だけ楽しんで、そのことには気付かないふりをしていたかった。
もしも来なかったら。
いつも、彼が遅刻するたびにそのことばかり考えていた。
このまま、もう会えないかもしれない。
そんな、希薄な関係。
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