鳥籠
「今日さぁ、誰だっけ? あの、ほら…背が高くって…エグザイルのアツシみたいなスキンヘッドでさ」
「誰?」
「んーと…彫り深くって、くどい感じで」
「だから誰」
「名前思い出せないから説明してんじゃん! そんで、ほら、ここにタトゥ入れてた! コウモリみたいな」

柚莉はそう言いながら、つまんだポテトチップスで鎖骨の辺りでくるくると輪を描く。
それで、やっと思い出した。

「ああ、あいつ。で、何?」
「その人に会ったの」

その人は思い出したけど、柚莉と同じように名前は思い出せない。
柚莉もかまっていないようだけど。

「朱をどこどこで見たけど、一緒にいたの誰だか知ってる? って言ってたんだよぉ」
「えー?」
「あたしだって、そんなこと知らないじゃん? 知らないって言っといたけど」
「あたしだってわかんないよ。今日2、3人は会ったもん、オトコ」
「だと思った」
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