鳥籠

第五節

あーあ、そろそろ通報されるかな。

アキヒロのアパートの階段下でひざを抱える。
ここまでは、何回も来たのだ。
でも、ここから上には柵でもあるかのように入れない。

道行く人も、住人も、あたしをじろじろ見ながら歩いて行く。
あ、と気付いたふうな人もいる。
またいた、と。
ひそひそと話しながら通る人。
目はあたしを見ている。
これじゃ、ストーカーだ。
通報、するよね?

通報されといた方が楽かな。
通報されて、接近禁止命令でも出れば、あたしはそれを理由に彼に会わなくて済む。
あたしの勇気がないからじゃなくて、司法が命じたんだから、と。

そんなあたしの前で、立ち止まった足。
その、とがったつま先のブーツは見覚えがある。
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