鳥籠
「……なに、シュン」

見上げることもせずに、そう声をかけると、ため息が聞こえる。

「こっちのセリフだよ。なにやってんだよ、お前」
「なんにもしてないよ」

そう、座ってるだけ。
なんにもしてない。
アキヒロを待ってるわけでもないし、会いに行く決心を固めているわけでも。

「そうだな」

シュンはしゃがんで、あたしの顔を覗きこむ。

「会った?」

黙って首を振って返す。
彼と話すことなんか、もう何もない。
大して話してもいなかったのだ。
結局、何も知らない。
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