鳥籠
「また蹴る」
「寒いんだもん」

ポケットに突っ込んだ手を出すのはイヤだ。

シュンが、目線であたしを部屋の中へと呼び込む。
ブーツのファスナーを下ろしてヒールをつかみ、足から引き抜く。
ぽい、と投げて、あがりこむ。

この部屋に入るのも久し振り。
ルックスのまま、シュンの部屋はとても綺麗に片付いていて。
生活感が、ない。
雑誌は綺麗に片付けられ、読みかけのものはまるでディスプレイのように見栄え良くテーブルに並んでいる。
それなりに古いアパートで、家賃も格安のはずなのに、まるでデザイナーズマンションかのようなモダンなインテリア。

こんな部屋だったっけな。
もう、よく覚えていない。

あたしの中の異性の部屋は、あの散らかった、足の踏み場もないあの部屋。
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