鳥籠
コンパクトだけど、洒落たベージュのソファ。
そこへ座るように促される。
黙って腰掛けると、当たり前のようにお茶が出て来た。
ペットボトルのお茶だけど、きちんとグラスに注がれている。

「あのさ」

シュンは、あたしの足元のカーペットにあぐらをかく。
あたしにそう話しかけてから、しばらく視線を床に落として黙り込む。
あたしは別に、シュンにする話なんかない。
聞き返すでもなく、グラスのお茶をすする。

彼は、携帯電話の折れ目に指先を差し込んで開いたり、閉じたりを繰り返す。
数度それを繰り返して、思い切ったように画面を開く。

「朱」
「うん?」

ちらりと横目で見た画面は、ただの待ち受け画面。
デジタルの数字が、時間をカウントしてる。
あたしが何もしなくたって、時間は進んでいく。
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