鳥籠
「俺、アキヒロじゃないし」
「わかってる! ねぇ、何?」
「何ってなに?」

あたしがさっき聞いたときには、もう夢の中だったんだろう。
シュンはまったくつかめないようだ。

「あたしがせっかくこんなに考えてんのにっ。すっごい、な…」

悩んでるのに、と口にしかけてふと黙る。
何を悩んでんだろ。
別に、あたしのことを好きでもない、ただのメンバー。
ただのメンバーなんて、ごく当たり前じゃない?
メンバーがただのメンバーなのは、とにかく普通のはず。
ハルカだって、ただのメンバーだよ。

「……いい。おやすみ」
「おい、朱。何だよ、人起こしといて! アキヒロのこと聞きたいんじゃないのかよ」
「いい、別に。なんでもない」

シュンからブランケットをはぎとって、しっかりくるまってくるんと背中を向ける。
シュンの声は聞こえないふりをして、目を閉じた。
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