鳥籠
そう言いながら、あたしが掛けたままだったギターを取り上げる。
そして、手際よく切れた弦をはずして、新しい弦に取り替えてくれた。

シュンは、いつでも助けてくれる。
あたしがあたしをどれだけ見失っても、混乱していても、こうやって先へと連れて行ってくれる。

「朱、ちょっと俺のギター持ってよ。チューニングすっから」

あたしは、気付くとドアに手を掛けて引いていた。

「朱、サボんなって」
「帰るね、あたし」
 
振り返って、ぐるっとスタジオを見回す。

「まだ2時間残ってるよ~?」

ハルカがアンプに腰掛けて、コーラを飲みながらそう言うけど、答える言葉が見つからない。
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