鳥籠
「帰る。…帰るから、さ」

「あ、そう」

予想していなかった声にはっとして、そちらを見る。
床に座り込んでいたアキヒロが立ち上がって、手元に置いてあったボイスレコーダーを手に取った。

「なに、アキヒロまで」

シュンが顔をしかめるけど、彼は無表情のまんま、呟くように言った。

「帰る。…帰るから、さ」

そして、前髪の隙間から、あたしにちらりと視線をくれた。
その口元は、わずかに微笑んでいたような気がする。

頭の中が真っ白にスパークした。

その間に、彼はドアを出て行った。


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