鳥籠

+++++

全速力で走り続け、やっと人ごみの中でその背中を見付ける。
猫背で、片手にボイスレコーダーをそのままぶらさげて、ウェストにはごつめのシルバーのウォレットチェーン。

上がった息を何とか静めたくて、いったん立ち止まって、咳き込みながら肩で息をする。
咳き込んだせいで、目に涙がたまる。
やっと呼吸が整った。
顔を上げると、アキヒロはまた見えなくなっていた。

この道をまっすぐ行くはず。
まだ、追いつける。

また走り出す。

今度はすぐに見付けられた。
慌てて彼の肩を叩いた。

「あ、きひ…」

振り向いた彼の顔は、驚いていた。
そして、首をかしげる。
< 37 / 140 >

この作品をシェア

pagetop