鳥籠

アキヒロが足を止めたのは、前にも来た彼のアパートの玄関口。
やっとあたしを振り返って、何故か泣いているあたしに気付いた。

あたしは何も言えずに、アキヒロの瞳を見つめる。

彼は元の方向を向いて、階段を上り始めた。
そして、たどり着いたドアに鍵を差し込んで、あたしの肩を叩く。

「入れよ」
「…え?」

急に我に帰って、聞き返す。

「いいよ、あがれよ」
「あ、じゃあ…おじゃま、します。あ、でも…」

今日は練習だったっけ、と思い出して、ギターを差し出してみる。
アキヒロはそれを受け取って、手招きをした。
忘れたはずがないのに。
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