鳥籠
栗色の髪。
こげ茶の瞳。
何度もうなずく癖。
雑誌のページの隅っこを弾く爪。
時々、口角をなめる舌先。
前髪の隙間から、横目に見せる微笑。

そして、名前は、アキヒロ。

アキヒロ、だ。


弾かれたように顔を上げる。

夕方の混みあった商店街の雑踏。
思い通りに進むことさえままならないけど。

あたしは、駆け出した。
人ごみをかき分けながら。
もがきながら。
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