鳥籠
アキヒロなら、わかる。
彼の何もかもが。
彼の人格も、生活も、経験も、そんなものは何一つ知らないけど。
アキヒロの、顔も名前もわかる。
だって、必要なんだから。

あたしには、アキヒロと、アキヒロの空気が必要なんだ。

だから、捜さなきゃいけない。
どこかにいる、アキヒロを。
あたしから捜し出さなければ。
あたしから向かっていかなきゃ。

あたしなら、絶対に見つけられる。

「アキヒロ!」

その背中はゆっくり立ち止まって、空を仰ぐようにしながら振り返る。
その口元には、微笑を浮かべて。
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