鳥籠
「その髪、どしたの? いいじゃん?」
「陸が…。新しいカラーの実験させろって」
「あ、タダ? ラッキーだったね」

首を傾げる、その無防備な表情。

ついこの間まで、音楽を介さない付き合いがなかったのに、ここに来る回数が増える度に、アキヒロも慣れて来たようだ。
その結果が、このよれよれのスウェット姿。
髪もカラーはさておき、寝癖だらけでボサボサ。
目もほとんど開いてないような始末。

でも、別にがっかりするわけでもない。

自宅にいるときくらい、これくらいだらしなくて普通だ。
そんなことくらい、あたしだってわかってる。
それを見せてくれるってことは、あたしに気を許してくれてるんだろう。

ドアを閉めると同時に、ポストの中のタバスコ瓶が転がってガタンと音を立てる。

鍵を閉めながら、思わず吹き出す。
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