鳥籠
「…あ?」

アキヒロは、そんなあたしを不審気に見咎めて、ドアまで戻ってポストを開ける。

「……また」

タバスコを手にとってあたしを振り返り、片眉をあげる。

「うん」

あたしはブーツを脱いで上がりこみ、この間買って来て置いておいたペットボトルを冷蔵庫から取り出して、テレビをつける。

ここがあたしの定位置と決めている布団の上に落ち着いて、リモコンを握る。
キッチンからは、あたしが一つずつ買って来て置いて行った調味料の小瓶がかちゃかちゃと動かされる音がする。
タバスコの置き場所を作ってるんだな、と幸せな気持ちでその音に耳を傾ける。

買って来ただけで、味も香りもわからないスパイス達。
あたしは料理なんか出来ない。
ローリエ、バジル、ガラムマサラ、八角、サフラン。
アーモンドパウダーとかミントとかは、お菓子用かな。
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