鳥籠
思ってもみなかったセリフが出て来てしまう。
まるで、惚気のような。

惚気じゃ、ないんだ。

でも、アキヒロが特別なことだけは本当。

彼のことを考える。胸が苦しくなる。

彼の指を思い出す。瞳が潤む。

彼の前髪が風になびく。ため息が出る。

彼の横顔を見つめる。言葉が消える。

彼の名前を呟く。そのまま、息が止まる。

最初はそんな反応をしてしまう自分に、恐怖を感じるほどだった。
そんな思いをしたことがなかったんだから。
正体のわからないウィルスに感染したみたいに、ドキドキした。
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