鳥籠
今までのレンアイは、相手を「良いかな」と思ったり思われたりして、肌を触れ合わせることを通過する。
そして、飽きたら離れてしまえばおしまい。それだけ。

付き合う前からそう思って臨むのだから、別れ話のたびに怒られたり泣かれたり、必死に引き止められたりすると、まったく意味がわからなかった。
飽きちゃったんだもん、しょうがないじゃない?
それしか言えなかった。
向こうから別れ話を出されたら、わかったというだけのこと。

でも、アキヒロはそんなものを全部無視しして、知らないうちにあたしの心の中に住み着いてた。
今更、どう対応すればいいのかわからない。

あたしは、本当に何も知らなかった。

恋がどんなふうにやって来て、どんな症状を引き起こすのか。
そして、自分がどんなふうに変わってしまうのか。

恋だ、と気付いたその瞬間から、あたしは無口になるしかなかった。
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