鳥籠
「朱? 起きた?」

聞いたことのある声だ。

「…少し」

声を出して答えてみると、我ながら寝ぼけてかすれた声。

彼の指が、あたしの髪をくしゃくしゃとなでる。
猫みたいに扱われるのは、割と好きだ。

「何時?」
「まだ9時。寝てなよ」
「うん…」

やっぱり、よく聞く声のような気もする。
でも、どこにでもいるような声。

いつもあたしを取り巻く何人かのうちの誰か。
特定なんか出来ないし、出来なくてもいい。

ただ、優しくしてくれるのなら。


あたしはいつも一人で。


あたしはいつも、一人じゃない。


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