鳥籠
アキヒロを想うと、幸福だ。

晴れた空を見上げることは、幸福だろう。
そこに届かないことに思い至るまでは。

届かないことに気付いてしまえば、幸福の中には虚無が組み込まれていることに気付く。

恋をしたのだ。
涙ぐむほどに、恋しいのだ。
歯ぎしりするほどに。恋しいのだ。
爪が手のひらに食い込むほどに、恋しいのだ。
そんな痛みが、すべて甘いほどに。

彼に、恋をするために、鳥籠から歩み出た。
恋をしたから、庭園から空の青を仰いだ。

幸福、だよ。

空が青いということを知ることが出来たのだから。
そして、それがあたしを幸福にすることまでわかったんだから。
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