他校の君。【完】
他校の君。



黒と白の弓道衣を身に纏った彼が弓をゆっくりと構える。

彼の姿勢は惚れ惚れしそうなぐらい、美しい。


そんな美しい姿勢を持つ彼は『ほぅ』と溜め息を吐いてしまうぐらいの、調った容姿も持っている。

スラリとした体格の持ち主である彼の身長はそこそこ高い。


彼の黒髪が光を反射してこげ茶色っぽく見えて、キラキラと輝いていて、

彼の黒くて鋭い瞳はある一点に定められている。



すーぅ、と彼が唇を引き結んだ。


(あ、集中してる)


彼が集中してる事があたしに伝わってしまうぐらいに、彼の周りの空気が変わった。

ピンと張り詰めた空気。

そんな彼を眺めながら、彼の空気にやられたあたしはゴクリと息をのみこんだ後、そのまま息を止める。






ー……タンッ!


彼の指から放たれた弓矢は、見事、的の真ん中に的中した。


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