他校の君。【完】
一緒に図書館まで歩く少しだけの距離。
数学を教えてもらう為だとは分かっていても、何だか放課後デートみたいで、未だドキドキする心。
「香澄って数学は苦手?」
「うん…。何かよく分かんなくなる。一臣君は苦手な教科ある?」
「いや?特に無い」
「…凄いね」
やっぱり文武両道の天海学園の生徒は違うんだ?
お兄ちゃんは何か普通に色々出来るし、お姉ちゃんはもの凄く出来るって訳じゃないけどさりげに出来るし、
色々失敗したりするあたしとは全然違う。
「そん変わり、得意なのも特に無ぇ」
「え、そうなの?」
「しいて言えば、数学?計算するだけだから」
「計算するだけにならないから、あたしは苦手なんだけどなぁ…」
一度は言ってみたいかも。
計算するだけ、って。
「教えんの、頑張るから」
ドキンッ
「……っ、あり…がとう」
不意に笑顔を浮かべられて、心臓がもの凄く大きく音を立てた。