他校の君。【完】



「…は?好きな子?」


笑っていた一臣君の雰囲気が一瞬だけ変わったから、好きな子がいる事に気付いてしまった。

さっきまでの気持ちとは違って、今度は気持ちが急激に下がって行く。


(やっぱり…いるよね)


いない筈無いよね。

一臣君の学校って可愛い子が多いのも有名だし…。

格好いい子も多いけど。

って、同じ学校とは限らないか…。


「好きな先輩ならいる」

「……え」


好きな先輩?

詳しく教えてくれるとは思わなくて、驚いてしまうと、


「俺、うちの部長に憧れてんの」


と、一臣君はあたしの反応を楽しむように口角を吊り上げた。


「……え」


ぶ、部長?


「阿部先輩って人がいてその人に憧れて弓道はじめたんだよ」


…あ、なんだ。

千尋君かぁ。

お兄ちゃんの友達のお兄ちゃんだから知ってる。

恋愛の好きとかじゃなくて、憧れの人の話で、女の子じゃないと分かってホッと胸を撫で下ろしたら、目の前の一臣君が何故かニヤニヤしている。


「焦った?」

「…焦ってない…よ?」


焦った、なんて言えないよ。

言ったら気持ちがバレちゃう。

バレちゃったらきっとフられちゃう。


(って、あれ…?)


何で焦ったなんて聞いてくるの?

それって、つまりは…


あたしの気持ち、…バレ…て…?


< 103 / 299 >

この作品をシェア

pagetop