他校の君。【完】
「…は?好きな子?」
笑っていた一臣君の雰囲気が一瞬だけ変わったから、好きな子がいる事に気付いてしまった。
さっきまでの気持ちとは違って、今度は気持ちが急激に下がって行く。
(やっぱり…いるよね)
いない筈無いよね。
一臣君の学校って可愛い子が多いのも有名だし…。
格好いい子も多いけど。
って、同じ学校とは限らないか…。
「好きな先輩ならいる」
「……え」
好きな先輩?
詳しく教えてくれるとは思わなくて、驚いてしまうと、
「俺、うちの部長に憧れてんの」
と、一臣君はあたしの反応を楽しむように口角を吊り上げた。
「……え」
ぶ、部長?
「阿部先輩って人がいてその人に憧れて弓道はじめたんだよ」
…あ、なんだ。
千尋君かぁ。
お兄ちゃんの友達のお兄ちゃんだから知ってる。
恋愛の好きとかじゃなくて、憧れの人の話で、女の子じゃないと分かってホッと胸を撫で下ろしたら、目の前の一臣君が何故かニヤニヤしている。
「焦った?」
「…焦ってない…よ?」
焦った、なんて言えないよ。
言ったら気持ちがバレちゃう。
バレちゃったらきっとフられちゃう。
(って、あれ…?)
何で焦ったなんて聞いてくるの?
それって、つまりは…
あたしの気持ち、…バレ…て…?