他校の君。【完】
一臣君の後を追うようにして、あたしも電車を降りると、
「あ、その子、起きたんだね」
と、若い駅員さんに声をかけられた。
それを聞いて、いまさらながら、途中で寝ちゃって、駅に着いた事に気付かなかった事が恥ずかしくなる。
カッと赤くなったあたしを一臣君がチラリと見てから、
「はい」
と、駅員さんに向かって笑いかけた。
ー…キュウン
間近で見た一臣君の笑顔に、思わず心がギュッてされたような感覚になってしまう。
って今はときめいてる場合じゃないよ。
駅員さんに謝らないと。
「ご迷惑をおかけ致しました」
あたしが寝てた事を知ってるって事は、全然気付かなかったけど、もしかしたら『着きましたよ』って声をかけてくれてたかもしれない。
最後の駅なのに降りないなんて、不思議だし。
「寝ちゃって着いた事に気付かないお客さんって結構いるから、気にしてないよ。けど次から気を付けてね」
「はい。すみませんでした」
気を付けます、と頷いたあたしを確認してから、じゃあと言って駅員さんが離れて行く。
そんな駅員さんの背中を何気なく眺めていたら、一臣君がまたあたしをチラリと見た。