他校の君。【完】



学園祭に一臣君が来てくれると決まってすぐ、電車が駅に着いた。

電車から降りて改札を通り、駅を出ると外は暗くなっている。


「じゃあね、一臣君」


駅を出たらあたしと一臣君の帰る道は逆方向。

だから手を振ったら、


「まだ手は振らなくていい。送るから」

「……!」


一臣君が嬉しい事を言ってくれる。


「で、でも逆方向だよ?」

「いい。俺は送りてーの。香澄を一人で夜に帰すのは心配だから」

「……!」


ま、また嬉しい言葉を。

今日は大サービスデイか何かなのかな?

一臣君の申し出に凄く嬉しくて照れてしまいながらも、


「じゃあ、お言葉に…「香ー澄っ」」


甘えて。と送ってもらおうとしたら、背後からあたしの肩に誰かの腕が置かれた。

そしてそのまま体重をかけられる。


(お、重い…)


倒れないように足に力を込めて堪えるあたしの目の前の一臣君の表情が一瞬で冷たいものへと変わる。

そんな一臣君を気にしてないかのように、


「遅いから迎えに来た」


耳元で聞こえた雪の声。

雪が背後にいるからどんな表情をしてるかは分からない。

けれど、その声に挑発のようなものが含まれてる気がする。

…ってそんな訳ないか。


「俺が香澄と一緒に帰るから、杉沢は遠慮なく一人で帰れよ。香澄の事は心配しなくていい。…俺がいるから」

「海谷だと余計心配なんだけど」

「負けるから?」

「負けねーよ」


あ、あれ?

何か二人の間に流れる空気、悪くない?


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