他校の君。【完】
「香澄に触んなよ」
「断る」
(…どうしよう)
よく分かんないけど、一臣君が雪に怒ってる。
なのに、雪ってば全然気にしてないみたい。
どうしよう、どうしよう、と二人を何度も交互に見ていたら、視界の端に見知った顔が移った。
「お、お兄ちゃん!」
どうやらあたし達の一つ後の電車に乗って帰って来たらしいお兄ちゃん。
助けて欲しい時にちょうど帰って来てくれたから咄嗟に助けを求めると、
「……また?」
少しだけ眉を寄せられた。
『また』とかどうでもいいから早く助けて欲しい。
あたしにはこの二人の空気をどうにかする事が出来なさそうだから。
すると、お兄ちゃんは一度溜め息を吐いてからあたし達の方に近付いて来て、
「はい、ストップ」
雪を引きはがしてくれた。
やっと雪が離れたからあたしはお兄ちゃんの後ろにサッと隠れる。
さっき離れたと思ったら、がっちりホールドされたからまたあるかもしれない。