他校の君。【完】



「警戒されてるな、雪」


お兄ちゃんの背後から覗き込むあたしを肩越しに見下ろしながら、お兄ちゃんが苦笑する。

すると、雪が拗ねたような表情を浮かべた。


「…警戒すんなよ」


(警戒すんなって言われても…)


あんな風にされると困る。

それに、


「喧嘩しちゃダメ」


言い合いとかそんなんじゃなったけど、喧嘩に近い感じだった。


「いくら香澄にダメって言われても、さすがにそれは無理」

「何で?」


一臣君も雪もお互いほとんど初対面なんでしょ?

なのに。


「か、香澄が好きだから」

「???」


何故か赤くなった雪にあたしは首を傾げる。

あたしが好きだから雪は喧嘩するの?


「でも、お兄ちゃんは喧嘩しないよ?」

「そう言う好きじゃなくて」

「???」


さらに首を傾げると、また一臣君に腕を掴まれた。


「………へ」


理解するよりも早く一臣君が歩き出す。


「香澄のお兄さん。香澄を借ります。家にはちゃんと送るんで」


(………え?)


どう言う事?

訳の分からないまま、あたしはお兄ちゃん達から離されてしまった。


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