他校の君。【完】
Side 雪
目の前で香澄を杉沢に連れて行かれそうになり、慌てて手を伸ばすと、
「雪」
拓海に腕を掴まれて、視線で止めろって言われた。
「離せよ、拓海!」
「香澄達がいなくなったらな」
「それじゃあ、遅いだろ!」
拓海の手を引きはがそうとしたけれど、拓海の手は全く離れない。
「お前の事も応援してやりたいけど、俺は香澄の気持ちの方が優先だから」
「気持ちって」
「雪だって分かってるだろ。香澄が誰を見てるかなんて」
ー…そんなの分かりたくない。
だって俺の方が杉沢よりも香澄と一緒にいる時間が遥かに長いし
杉沢より香澄の事を知ってる。
香澄の事を大事に思ってる。
(それに、)
ずっと好きなんだ。
鈍感過ぎる香澄は可愛いって言っても、俺の気持ちに気付いてくれないし、
さっきだって、やっと言えた『好き』の意味に全く気付いてくれなかった。
けど、
それでも俺は香澄が好きで。
(……あんなパッと出のヤツなんかに…)
「……奪われてたまるかよ」