他校の君。【完】



Side 香澄


「一臣君、あの…」


あたしの腕を掴んだまま、すたすたと歩いて行く一臣君に困惑していると、一臣君がピタリと止まった。

突然止まった一臣君の背中にあたしは顔をぶつけてしまう。


「……痛っ」


片手で顔を抑えようとすると、一臣君の手が伸びて来て、あたしの頬に触れる。


「悪い、痛かったな」


謝る一臣君に小さく首を振ると、一臣君の表情が少しだけ和らいだ。

けれど、やっぱり不機嫌が残ってい…。


(って……ぇええ!?)


頬に触れていた一臣君の手があたしの顎に移動して、何故かクイッと上を向かせられてしまう。


「な、か、かず…っ?」


驚いちゃって、言葉をちゃんと言えないあたしを見下ろす一臣君に全身がカァッと熱くなり始める。

だ、だって、至近距離。

しかも、見つめられてる。

な、何だろう。

これってどう言う状況だろう?

一臣君、今不機嫌なんだよね?

頭の中が、混乱し過ぎてぐるぐるする。

心臓だって、どきどきしてる。

ぐるぐるにどきどき。



ー…もう、本当何が何だか分からない。


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