他校の君。【完】



「香澄、あのな」

「うん?」


一臣君が『あのな』の続きを口にする。

けれど、あたしの頭はすぐにはその言葉の意味を理解出来ない。



『……好きなんだ』



一臣君から言われてから数秒間固まるあたし。

固まっている間でも、頭の中ではその言葉がぐるぐる回る。

『好きなんだ』が。


(…あ、違う。空耳かも)


空耳だ。

うん。空耳。


とか思いつつ、確かにそう聞こえたような気がする。

けれど、やっぱり聞き間違いかもしれない。

あたしの耳、多分都合が良すぎるんだろうな。

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