他校の君。【完】



『好きなんだ』を『杉沢だ』とでも聞き間違えたのかもしれない。

聞き間違え加減に無理があるけど、無理矢理自分を納得させる。


だって、一臣君があたしを好き…?

そんな筈無いよ。

一臣君は千尋君の彼女さんが好きなんだから。

無い無い。


「香澄、分かってる?」

「え?う、うん。分か…ってるよ?一臣君の苗字が杉沢なんでしょ?」

「………」


あたしの返事に一臣君は一瞬無言になる。

そして、溜め息を吐いた後、


「ちゃんと、聞け」


あたしをまた真剣に見つめる。

その瞳に心がドキン!と大きく音を立てる。

ま、まさか、一臣君、本気?


「俺は」


ドキドキ


「香澄が」


ドキドキ


「好「わ"、わ"ぁー!!」」


あまりの心臓の音に絶えられなくなって、思わず叫んでしまったあたしは、一臣君からバッと離れた。

そして、


「ご、ごめんなさい!も、もう、無理ぃ!」


心臓がドキドキし過ぎて恥ずかし過ぎて、

この状況に絶えられなくなったあたしは、

一臣君からさらに一歩離れる。

けれど、すぐに引き戻されてしまう。


「俺だって無理。こんな可愛い香澄、誰かに取られるなんて耐えらんねー」

「………!!」







あたしの心臓、今止まったかもしれない。


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