他校の君。【完】
Side 香澄
ふわふわしてる、と言うのが一番当て嵌まってるかもしれない。
一臣君が好きって言ってくれた事が嬉し過ぎて、あたしは授業中の先生の言葉が全く耳に入ってない。
雪の言葉だってろくに聞いてない。
「試験管が六本あるので色がどう変わるのかを確認して、ノートに化学反応式を書いていってください」
「「はーい」」
先生に言われた通り、試験管に液体を入れて反応を見て、ノートに書いて行く。
火で試験管の底を炙りながら、一臣君に抱きしめられた事を思い出して、一人身悶えそうになってしまうと、
「試験管振ってニヤニヤしてる…。キモい」
どこからか聞こえたそんな声。
慌ててあたしは身悶えるのを我慢して、ごまかすように真剣な表情を浮かべる。
もう、言われない?
って言うか誰に言われたんだろう。
密かにドキマギしていると、
「二之宮っていっつもあんなんだよね。本当キモい」
どうやらあたしの事じゃなかったらしい。
キモいとか傷付くから言っちゃダメだと思うなぁ。
そう思いながら先生に視線を移すと、先生は全く気にしていないらしく、試験管を眺めながらひたすらニヤニヤしていた。