他校の君。【完】
「何で?」
「……へ?」
「何であいつな訳」
「な、何でって」
理由を聞かれたらどう答えたらいいのか分からない。
けど、
一臣君を好きだと思う気持ちは本物で。
「杉沢に対しての香澄の好きって本当に恋?ただの憧れとかなんじゃないの?」
「………」
ただの憧れ?
そんな事無いよ?
だってあたしは…。
「何でそんな意地悪な事言うの?」
何であたしの気持ちを否定するの?
いつもは優しいのに。
「意地悪なんか言ってない。俺はただ、」
「ただ?」
あたしを真剣に見下ろす雪が一度言葉を止めてから、続きを口にする。
「香澄の事が「香澄っ、大丈夫?なかなか戻って来ないから…」」
けれど、雪の言葉はみっちゃんの声に消されて、最後まで聞けなかった。
「……っ、蜜華!何で今っ」
「……え、ご、ごめっ。何か大事な話でもしてたの?」
駆け寄って来たみっちゃんがピタリと止まって、ごめんと雪に謝ってすぐにいなくなろうとした。
すると、雪がハッとしたような表情を浮かべて慌ててみっちゃんの腕を掴む。
「な、何」
「ごめん。今の無し!」
「……へ?無し?」
怪訝そうな表情を浮かべたみっちゃんの腕を掴んだまま、雪があたしを見る。
「香澄、一人で戻ってて」
「……え?う、うん」
コクリと頷いたあたしの頭に雪がポンッと手を置く。
「香澄の気持ちを否定してごめん。…けど俺は、香澄があいつと付き合うの、応援しないから」
「……雪?」
言いたい事だけ言った雪はみっちゃんを引っ張ってどこかへ行ってしまった。