他校の君。【完】



「もし彼女に『取って』とか可愛いく言われたら喜んで取るもんなんだよ」

「…喜んで?」

「そ。頼りにされると少なくとも俺は…って何恥ずかしい事言ってんだ俺」


少しだけ視線を泳がせた一臣君は誤魔化すように咳払いをする。


そ、そっか。

相手が彼氏なら言っていいんだ…?

あ、でも


「可愛いくなんて言えないよ」


どうやったら可愛いくなるのか分からない。


「じゃあ香澄は普通に言ってみて」

「………え」


普通?

普通ってどうだっけ?

ほんの少し分からなくなりながら一臣君を見上げて、


「うさぎ、取ってくれる…?」

「………」


聞いてみると、一臣君が何故か黙り込んでしまった。


(…やっぱり可愛いくなんて出来ないよ)


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