他校の君。【完】
そんな嬉しい事してもらっちゃったら倒れちゃいそうだから、ここは遠慮しておこうかな?
「もしかして口移しがいいとか?」
「………!!」
く、くく、口?
(え?え?)
今の聞き間違え?
聞き間違えだよね?
耳を疑うと一臣君がまたくっと喉で笑う。
その表情でなんとなく分かってしまう。
(そっか)
あたし、またからかわれたんだ?
「一臣君の意地悪」
「は?意地悪な事言った?」
「言ったよ」
(口移しだなんて)
口移し、とは口で言えなくて視線を斜め下あたりに逸らしながら
「そんな想像もつかない事…」
そう答えてしまう。
「想像つかねーの?」
「つかないよ…」
そんな夢みたいな事。
「………。香澄」
「???」
名前を呼ばれて、斜め下に落としていた視線を一臣君に向けると、
「………え」
視界が暗くなった。