他校の君。【完】
ー…
………
「お姉ちゃん!」
「何?」
「あたしの制服のネクタイ見なかった?!」
朝。
一臣君が来てくれるだろう時間までもう少しなのにあたしはバタバタと慌ただしくしてしまう。
「さっき手に持ってたじゃない」
「どこに置いたか分からないの!」
昨日、みっちゃんと話をした後にベッドに入ったんだけど、一臣君との電話を思い出してなかなか眠くならなかった。
しかも、迎えに来てくれる事も嬉し過ぎて、さらに眠れなくて、
結局眠れたのは何時か分からないくらいに遅かったと思う。
そのせいで寝坊しそうになっちゃったあたしは今、大慌て。
「ネクタイどこー?」
わあん!とリビングを探し回っていると、
「香澄ー、ネクタイ、洗面所に忘れてたぞ」
拓海お兄ちゃんが苦笑いしながらネクタイを持って来てくれた。
「ありがとう!お兄ちゃん!」
慌てて受け取ったあたしはいそいそとネクタイをしめながら最後の支度を終わらせる。
(よ、よし。一臣君が来る前に準備出来た)
ふぅ、と安堵の溜め息を吐くと、
「香澄ったら、今日はどうしたの?」
お母さんに驚かれてしまった。
「いつもはもう少し余裕がある筈なのに」
不思議そうに首を傾げるお母さんにあたしはみるみるうちに真っ赤になってしまう。
だって、お姉ちゃんやお兄ちゃんは一臣君の事知ってるけど、お母さんは知らない。
お父さんも知らない。
お姉ちゃんは普通に彼氏さんを紹介してたから、お姉ちゃんみたいに『彼氏出来たから迎えに来てくれる』って言えばいいんだけど、
「………っ」
て、照れる。