他校の君。【完】



びくりと身体が跳ねて一瞬頭が真っ白になっちゃったけど、すぐに学生鞄を手に取り玄関に向かってあたしは走る。

多分、今普段の二倍どころか三倍ぐらい速く動けたかもしれない。

ー…思いもしなかったの。

一臣君が迎えに来てくれる事が嬉し過ぎて。

迎えに来てくれるって事はあたしの家族と鉢合わせる可能性もあるって事だよね。

それを全く思いつかなかった。

で、今日いきなりお父さんに会っちゃうなんて…。

お父さんに何も言われてないかな?

お父さんは寡黙だけれど、お姉ちゃんの時もショック受けてたし。

慌ててローファーに足を入れ、まだちゃんと履けてないにも関わらず、ドアノブに手をかけようとしたから、足が絡まってしまい、


バンッ


「ふぎゃっ」


おでこをドアにぶつけてしまった。


「~~~っ」


そのあまりの痛みに鞄を落としてしまい、両手でおでこを抑えてしゃがみこんでしまう。


「…痛いー」


視界がほんの少し滲んでしまった。



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